こんにちは!
バレエスタジオマイスターの大塚健太郎です。
これから自分のスタジオをオープンしたいと夢を膨らませている先生たちが気にするポイントは
「近所からクレームがなくレッスンを続けられるスタジオ」です。
上下階のテナントや隣家から出る苦情は「騒音」の問題で
これに関しては防振防音床を作ったり、防音壁を作ったり対策はあります。
もっと言えば、そもそものビルの構造が防音されていた方が有利なので
鉄骨造よりはRC(鉄筋コンクリート)造が良いよね…
というのがこれまでの常識でした。
でも、今はそれだけでは足りません。
スタジオの先生たちは、物件にアスベスト(石綿)が使われているか否かを見極めなければならなくなりました。
あなたがスタジオの天井高を高くしようとして天井板を剥がしたときに、天井裏にアスベストが現れます。
そうなった場合、あなたのスタジオはどうなるでしょう?
すっとぼけて、そのまま運営する事は出来ません。
保護者の誰かが「石綿じゃないですか?」と聞いて来るからです。
大家さんに泣きついても取り扱ってくれません
「現状のままで賃貸の約束だし、天井板を剥がしたのはお宅達の方でしょ」
リフォームをした業者に相談してもビックリする見積を出されるだけです
「今からでも除去できますけど500万円掛かります」
「新たに天井を作って覆い隠すのにも照明器具とエアコン移設の費用が掛かります」
新スタジオオープン関連で融資を受けたばかりなので
追加の融資は到底見込めません・・・
さあ、どうしましょう。
- なぜ今、石綿のチェックが必要か?
- 分かりにくい責任の所在
- テナントに不親切な賃貸契約書
- RC造なら安心か?
1.なぜ今、石綿のチェックが必要か?
2022年4月にアスベストの規制が強化されました。それを受けて施工業者は解体やリフォーム工事に伴う事前調査と報告が必須となりました。では「リフォームをしないのでうちは関係ない」のかと言うとそうではありません。アスベスト含有建材の経年劣化で居室・事務室・作業場に石綿が飛散する可能性があれば、従業員や作業員等の石綿暴露が懸念されます。 そうした関係者が将来石綿肺・中皮種・肺がんを発症した場合、ビルオーナーやテナントの事業主が責任追及されます。大阪の文具店勤務の70歳男性が悪性胸膜中皮種で死亡した事例では事業主に対し6000万円の損害賠償判決が出ました。
つまり、バレスタジオを運営する先生も室内に使われている石綿の状態を把握しておく必要があるという事です。
知らなかったでは済みません
2.分かりにくい責任の所在
スタジオを改装するために工務店に相談していれば石綿の有無は確認できます。100万円以上の工事においては事前に石綿含有建材の調査と報告が施工業者に義務付けされているからです。もっと言えば100万円以下の工事でも調査は必要とされています。なので注文者であるバレエの先生は事前にアスベストの有無を知ることが出来て、どう対応するか決める事が出来ます。もちろん施工業者がいい加減だったり、そもそも法律の改正を知らなかったりしなければですが…。
ただ賃貸契約前に工務店に相談していなかった場合は問題です。ビルオーナーや管理不動産担当者がアスベストの規制強化を理解していないかもしれません。今年相談を受けた物件ではビルオーナーにアスベストの有無を確認すると
「以前石綿調査をして問題ないと報告を受けている」との回答がありました。でも調べてみると残念ながらその報告書は2005年に調査された物でした。2006年の法改正で0.1%を超えて石綿含有する製品の製造が禁止されました。つまり相談を受けていた賃貸物件の耐火被覆は現行不適格(現在の法律では違法)でした。その先生には「賃貸契約はやめた方がいいですよ」とお返事しました。
なので、誰かが「石綿は入っていません」と言っても鵜呑みにするのは危険です。
きちんと分析調査しないうちはプロでも判断が出来ません。
そんなあいまいな状況で賃貸の話を進めるのは、あなたが進んでババを引くようなものです。
3.テナントに不親切な賃貸契約書
ビルオーナーさんがどんなに人当たりが良くても、仲介の不動産屋さんがどんなに親身に寄り添っていてくれても、それが賃貸契約書に反映されなければただの世間話です。「洋式トイレにリフォームするので、退去時には買い取ってほしい」という買い取り請求も最初の賃貸契約時に合意しておかないと無効です。賃料・保証人・更新期間・原状回復内容以外のあなたにとって大事な内容は「特記事項」に書かれています。重要事項説明で石綿について説明しなくてはなりませんが、「調査していない」という報告でもOKです。私からしたらなんていい加減な説明だと思いますが、不動産業界ではまかり通っています。大事な内容は特記事項に記載されますので、小難しい重要事項説明を聞いて睡魔に襲われていても「特記事項」の説明に入ったら意識を集中してください。
賃貸契約する物件に石綿含有が疑われるなら、その後の対処と費用の負担について契約前に取り決めておくべきです。「天井裏には石綿含有の耐火被覆材があるが、現状天井で覆われている。このまま使用する分には問題ないのでオーナーは石綿処理も費用負担も関与しない」とか「天井材を解体して天井高をあげるような造作をする場合、石綿処理に関する届け出・費用はテナントが負担する」など明確にしておくと後々のトラブル回避になります。
4.RC造なら安心か
ここまで読んで「やっぱりバレエスタジオで借りるなら鉄骨造より鉄筋コンクリート造の方が安心だ。防音の問題もアスベストの問題もクリアできそうだし、RC造で探そう!」
と思われた方も多いでしょう。
ですが、RC造にもレベル1に相当するアスベスト建材が使われている可能性があるんです。
吹付の仕上げ材でバーミキュライトとかパーライトが吹き付けてある物件があります。これも経年劣化でぽろぽろ零れ落ちてきますのでアスベスト暴露の危険があります。しかも新築当時は吹付が見えていたのに、その後のリフォームで新たに天井が張られているマンションがあります。外からの目視ではわかりません。きちんとした調査が必要です。
なのでRC造であれば安心安全とは言い切れないのです。
いかがでしょうか?
バレエスタジオ事業地として賃貸物件を探す場合、今後は石綿の有無についてもチェックすると良いと思います。
本記事はネガティブな内容ばかりでしたが、事前にアスベストについて知っておくことはあなたの利益にもつながります。
鉄骨造の路面店舗で振動・音漏れの心配がなく、もともと倉庫だったので天井が高く、トイレもエアコンも完備されている夢のような物件があるとします。ただ問題は天井裏のアスベスト。でも天井板を既存のままでレッスン出来ますから、天井裏の石綿は室内には落ちてきません。現状のままスタジオ運営できます。
であれば、石綿の状況をビルオーナーに伝える事で今後「安く・永く」借り続ける交渉も可能でしょう。だって、石綿への不安で次のテナントは見込めないかもしれませんからね。
バレエスタジオの物件探し、リフォーム工事をお考えの先生は
エーゼン大塚建設でご相談いただけます
お近くの方は永代ショールームまでお越しください。
バレエスタジオマイスターの大塚健太郎がしっかりお話しをうかがいます。